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『星の瞳のシルエット』〜250万人の元乙女を敵に回すことになるかも [まんが:星の瞳のシルエット]

なんかおこられそう。この文章。

星の瞳のシルエット (1)

星の瞳のシルエット (1)

  • 作者: 柊 あおい
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 1999/01
  • メディア: 文庫

1986年頃から、「りぼん」に連載され、「全国250万人の乙女のバイブル」の異名をとった作品で、「耳をすませば」「猫の恩返し」の柊あおいの出世作です。

このまんが、当時の女の子だけじゃなくて、なぜかおたく男子にも人気。
エイプリルフールネタに引っかかってくれたうるとら某氏もその一人(というか、私にこの作品を教えた張本人なのだが)で、毎月「りぼん」を買って、「香澄たん萌えー」とか言ってたそうな。いや、当時は「萌え」って言葉は無いからそのまま言ってたわけじゃないと思うけど。
あと、ギャルゲー系のMLにはいってたとき、「星の瞳のシルエット」の話題になって大盛り上がりで、そのまま「星の瞳のシルエット」のMLができちゃったことも。

さて、この漫画、なんで自分が好きか、んでもって、おたく男子にも人気があるのかさっぱりわからなかったのですが、ある日、ふと気がついてしまった。・・・・
その理由は、実は登場する男の子たちにあったのです。

その一。白石司君
超美形で女の子にモテモテなのですが、この少年は14歳にしてはやくも一つの悟りを開いています。それは、
まわりできゃあきゃあ言っている子は自分の顔を見ているだけで、本当の意味で自分が好きなわけではない

というもの。
そこで彼は、言い寄ってくる女の子たちをファンクラブのようなものにまとめ、自分の絶対領域には踏み込ませない高度な護身術を身につけます。

また彼は美形キャラでありながら、本当に好きな女の子にはふられてします。
そう、彼はイケメンでありながら心に喪男をもった少年なのです。
イケメンでありながら、DQNにはならなかった心優しい男の子なのです。

その二。日野君。
ニキビ面の少年。しかも、天文おたく
こいつはヒロインの香澄のともだちの真里子に惚れてしまいます。
が、真里子は後に出てくる久住のことが好き。
真里子の想いを感じてしまった彼は苦渋の選択をします。
それは真里子に協力して、真里子と久住の仲を取り持つこと。
うう・・いいやつだなぁ。DQNなら絶対無い選択肢だ。
まあ、結局真里子も彼の優しさに気がついて、いつの間にか「久住君よりも大切な人」になり、二人はハッピーエンドとなるわけですが。

さて、問題の人、久住智史君。
彼は格好よくて、スポーツマンで、・・・
え?スポーツマン?
弓道部にいたのは中学の時だけですよ?

そう。

だれも言いませんが、あえて言います。彼は、
「筋金入りの天文おたく」
です。しかも、日野君よりはるかに濃い人です。

うわー。250万人の元乙女が石を投げてくるー(ブルブル)

母親の影響とはいえ、小さい頃から星好きで、初対面の女の子に
星の妄想話を語ったり、馬鹿でかい天体望遠鏡を買ったり、
進学先も天文関連に進んだり、天文おたく道まっしぐらです。
彼を天文おたくと言わずして、誰を天文おたくと呼ぼうか!!

うわー。250万人の元乙女がまた石より固い物を投げてくるー(ブルブル)

あと、もう一つ「星のかけらの女の子」と知り合ってから、香澄がその子だと気がつくまでの7年間、彼は「星のかけらの女の子」を萌えキャラ化して愛していたと思われます。

さて、キャラを並べてみると、
・優しいおたく少年
・心に喪男をもつ少年
・天文おたく少年
おたくカラー・喪男カラーをもった優しい少年ばかりです。
DQN少年は一人もいません。

さらに、ヒロインの香澄も一見普通の女の子ぽく見えますが、十分オタク素養を持っています。
その1.「すすき野原の男の子」の妄想話に感動し、かつそれをすてきな話として
中学時代までずっと思ってる。
その2.「すすき野原の男の子」を萌えキャラ化して、7年間思い続ける
その3. 久住の趣味を理解し、尊重して応援する。
おたく素養がないと、この三つは成立しません。
もっと言えば、久住が天文おたくだったからこそ香澄は久住が好きになったのです。

「すすき野原の男の子」がいなければ、たぶん時期的に翼君とか岬君にきゃあきゃあ言っていたと思われます(ほんとかよー)

そう、「星の瞳のシルエット」とは、オタカップルの恋愛を描いた「おたく少年萌え漫画」だったのです。

(これで完全に全国250万人の元乙女を敵に回したかも。orz)

登場する男の子たちがおたく&精神的喪男だったからこそ、彼らを身近に感じられたおたく男子にも人気がある、というわけなのです。もちろん、この作品の魅力である心理描写の丁寧さ、そして女の子たちのかわいらしさがあってこそなのですが。

柊あおいがオタカップルの話を書く漫画家だったということは、その次の作品「耳をすませば」をみれば、はっきりわかります。

耳をすませば

耳をすませば

  • 作者: 柊 あおい
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 1990/02
  • メディア: 新書


・二人が知り合ったのは、図書館で借りたライトノベルの図書館の貸し出しカードから。つまり、今なら二人ともライトノベルオタク
・女の子はライトノベル作家指向、男の子はイラストレータ指向。
二人とも、バリバリのオタクです。

と考えてみると、りぼんでの連載が頓挫し、宮崎駿氏に映画原作として取り上げられたのは当然かも。

りぼんの読者のほとんどはオタクではないだろうから、図書館のカードで男の子が気になるなんて展開、絵空事としか感じられないだろうな。
逆にオタク業界でながらく生きてきた宮崎駿氏(というか、オタクスタイルの創始者と言っても過言ではない)だと、「耳をすませば」がむしろリアルに見えてきてしまうかも。

耳をすませば

耳をすませば

  • 出版社/メーカー: ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント
  • 発売日: 2002/05/24
  • メディア: DVD

おそらく、柊あおいさん本人も「おたく少年萌え漫画」を描いていたつもりは無くて、それまでの周りの人がおたくかかった人が多く、本人もおたく入っている人なので自然にそうなっちゃっただけだと思われます。

90年代、柊あおいさんが少女漫画であまり活躍できなかったわけもこれで説明がつきます。
「相手を一途に思うオタカップル」の話なんて、恋愛資本主義からみると敵対思想以外の何者でもないです。

りぼんは低年齢化していったし、年齢高めの雑誌は恋愛資本主義のプロバガンダに入っているでしょうからね。
「久住君と白石君の二人で揺れる想い」なんて漫画をかける人だったら話は別だけど、香澄は最後まで久住君だけだったし。


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ちきうや(智弓屋)

はじめまして、青陵駅の掲示板でみてきました
楽しく拝読しました わたしは250万乙女と50万野郎のうちの後者なので、石を投げるもりぼん本誌をぶつけるもなく、結構納得で来ましたよ 久住、日野の二人の傾向は漠然と思っていたことで、あおいセンセと作品分析はこれまでに何度となく仲間間で話していたことなんですけど、司クンのイケ面にして喪男という断言が効いてますね 喪男のニュアンスがはっきり分からないのが残念ですけど
by ちきうや(智弓屋) (2005-06-12 11:11) 

あとるしゃん

ありがとうございます

喪男はモテない男って意味です。はい。

本当の意味で好きになるということがどういうことか、
司君は14歳の頃に既に気がついていたのですね。
by あとるしゃん (2005-06-12 20:19) 

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